経済
人的資本:
勤勉な労働力、効率的な技術導入、優秀な品質管理、
外国の思想・文化を日本に合った形に加工・改良して吸収・同化
対象を相対化する日本文化の特徴が、欧米の科学技術を積極的に摂取実用化するのに有利に働いた反面、絶対的な真理の探究には不向きだったのかもしれないという考え方もある。
少子高齢化社会では、高齢者の健康増進が重要でそれは高齢者の活用により最も効率的に実現する。高齢者に多い疾患の予防・治療等の開発が求められるが、そのためにはエネルギーが必要である。



体制、基盤の整備
  研究者の独創的で先駆的な基礎研究と政府主導のプロジェクト型応用開発研究はいずれも重要であり、調和のとれた資金配分が必要。  研究費の充実とともに、世界水準の研究施設・設備の整備、優秀な研究者及び研究支援者の養成・確保、海外や若手の研究者が我が国で活躍できるような魅力ある環境・制度の整備が必要。また、今後は日本が技術標準という基盤をつくり、知的所有権で保護し、競争をリードすることも大切。

研究活動の評価
  優れた研究成果を上げるためには、研究者の業績等についての適切な評価とともに、研究課題及び研究機関についての厳正な評価の実施が必要。

人工資本:
地球環境問題を解決し、良好な環境を維持するため、汚染の除去等の技術が重要。
 科学技術の進歩は食生活から娯楽に至るまで、あらゆる日常生活に恩恵をもたらし、科学技術の社会への浸透が、人間の生き方や思想に大きな影響を及ぼしてきた。

自然資本:
食料・水の確保は広義の安全保障に包含される世界的重要課題。食料の自給率を高めるためには、栽培・飼養管理技術の開発等が必要。

防災対策では、耐震建築技術の向上、防災・安全に関する研究開発の推進等が必要。

21世紀の科学技術の在り方

  
日本人の科学技術に対する考え方及び特徴
  明治時代の西洋からの科学技術の受容方法が、科学の生み出す果実を手にすることに熱心で、科学自身の木を育てることをあまりしてこなかったというものであったことが、今日の科学に対する基本的な姿勢に尾を引いているのではないか。このため、日本の産業が行き詰まると科学技術の重要性が叫ばれるが、企業の業績が好調で資金が潤沢の時には、科学への関心は必ずしも高まらなかった。
  こうした背景には、日本人と欧米人との間で科学的精神や科学技術についての考え方に相違があるからだとも言え、その違いは絶対的な思想・哲学に基づく西洋文化と物事を相対的に見る日本文化の違いに由来すると言えるのではなかろうか。
  外国の思想・文化を日本に合った形に加工・改良して吸収・同化させてきた歴史が示すように、対象を相対化するという日本文化の特徴が、欧米の科学技術を積極的に摂取し、実用化することに有利に働いたと言える。反面、こうした日本人の相対的思考は、絶対的な真理を探究する信念と情熱が希薄なため、科学を生み出すには不向きだったと言えるのかもしれず、伝統的に日本は根元的なものの追求に弱いと言われる所以であるかもしれない。
  日本人の科学技術に対する考え方が、基礎を軽視しがちで、成果のみ効率的に活用するという応用志向が強いと指摘される所以は、プラグマティズム的な思考の傾向が強いためと言えるのか、それとも日本人に特有の国民性や伝統的考え方によるものではなく国の置かれている時代的な状況に依存すると言えるのかは、判別が困難であり、おそらく両方の要因が絡み合っているのであろう。同様に、日本人には創造性が不足しているとの議論があるが、創造性は国民性に根ざしているばかりでなく、文化や社会制度を含めた社会環境によっても影響を受けるのであろう。
  一方で、自然と人間との関係を対立的にとらえてきた西欧の伝統的考え方が、自然環境の破壊につながったのではないかと指摘され、見直しを迫られている中、自然と人間との関係を共生的にとらえる日本的な考え方は、環境への配慮という視点が益々重視される21世紀の科学技術を振興させていく上で、日本がイニシアティブを発揮して世界に貢献できる指導理念となり得よう。

今世紀に入ってからの「核問題」、「原子力問題」に関する議論は、3.11以降、ますます発散し、限りなく多元化している。閉塞感と無力感が充満し、建設的な議論をするための論点整理が急務となっている。
廃炉を完璧に実施することと再稼働を適正に実施することは、原子力関係者に課せられた義務であることは言うまでもない。
しかしながら出口戦略としては不十分である。選択肢すべてについて検討を加えなければ、未来を拓くための視野は閉ざされたままになってしまう。
そこで、核に関するユートピア論とデストピア論を最初に提示することにする。立論は包括的かつ普遍的でなければならない。求解のプロセスは確立した知識、共有できる価値観の確認作業から始めなければならない。反対意見、特に検討し尽くされ、かつ裏づけのある反対意見は、今後の改善の方向づけや斬新なアイデアの創出にとって極めて有効な刺激剤である。
デストピア論を例示する。

日本のような地盤が不安定な火山列島にリスクの高い原子力発電所を建設することは無謀である。
日本の技術は古くは和魂漢才、近代からは和魂洋才という導入型の戦略で、粘り強い改善努力を通して海外の範例を自らのモノとして製品化してきた。
日本のような苛酷な自然条件で核エネルギーシステムを利用可能な人工物とすることは、旧来のキャッチアップ型の科学技術の進め方では実績がなく不可能である。そうした人材を養成できるか証明されていない。
自然に関する知識は不足している。
生命に関する知識は不足している。
人工物に関する知識は不足している。
制御可能な人工物であっても必ず失敗することがある。
死亡率の年次推移の統計からは、窒息、交通事故、転倒・転落、溺死、火災、中毒が大半である。放射線が直接的な原因で死亡した例は極めて限定的である。

エネルギー・マス別の統計をとってみる必要がある。力学的エネルギーによる死亡が圧倒的であり、飢餓と貧困が原因で毎年数百万人が死亡している。食糧の生産とエネルギーとは関係し、エネルギーとGDPは相関する。

核エネルギーを活用する技術を有する国家が核エネルギーを活用することによって、エネルギーの分配は楽になる。複雑な課題の評価においては、欠点を強調することによる分析ではなく、全体のバランスを俯瞰し、理解することである。エネルギーは、環境、経済、倫理を包括的に判断すべき対象である。エネルギーは現代社会を支える最も重要な要素技術であり、食料生産から生活環境の維持に至る全ての活動の基盤となっている。

このエネルギーは全体として捉えるべきであって、地球環境問題から経済格差に至る全ての事象と複雑に絡み合っている。

全体として理解し、状況の変化に柔軟に適応できる技術だけが生き残る。複雑に変化する全体を理解するための能力を涵養するための努力が足らない、と識者は主張するが、事後的な解釈や説明はできても、既断することはできない。常にバイアスがかかることを意識しなければならない。
 
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