2-4 原子力産業の構造の問題
下請け、孫請けという日本の生産構造の問題だと思う。元請けではちゃんとやっているものが、孫請け企業で事故を起こしてしまう所が問題である。下請けは、安い給料で働かされて、責任まで取らされるのはかわいそうだ。モラルは給料によって維持される面がある。
下請けも、仕事を受けたからには、それなりの責任があるはずだ。下請けも含めた各事業者の責任が重要である。事業者は、人はミスを犯すという前提で仕事をすることが、安全文化の面から重要である。
ドイツのマイスター制度が下請けに出すことにより、崩壊し始めている。また、ローマ帝国は、自ら行わずに下請けに任せるようになって、国力が衰えた。新幹線のトンネル問題も、チェックを行うシステムにより、カバーするしかない。工業高校の退学率が普通高校の10倍もあるという現状は、日本の技術力確保の観点から危機的な問題である。
原子力の技術開発は、進んでいるが、働く人が仕事の内容を理解し、モラルを維持していくことが必要である。安全への意識が低下することでトラブルが発生する。チェック機能を機能させることも重要。下請けまで、安全への意識を徹底しないと、大きな事故につながる。JCOで働いていた人は非熟練工であった。コストのために未熟練工を使った。個々の従業者に本来の意味の職人気質を植え付ける必要がある。どんなにハードがよくなってもこのような事故は起きる。
原子力発電に関する利権構造の問題もあるのではないか。
利権の問題は、公共事業にも見られることであり、原子力発電が突出している訳ではないと考える。
原子力発電所の建設では、廃棄物の問題等、50年後、100年後も地域へ与える影響が大きいので、公共事業と同じ扱いとするべきではない。
電力会社として、原子力は危険なものであるという認識に立って、安全を最優先にして原子力発電に取り組んでいる。それだけに今回のJCOの事故は非常に残念だった。
背景には原子力産業政策の問題がある。JCOのような会社を育成すべきかどうかである。JCOは国際的に見て技術革新に遅れていた。電力会社からのコストダウンへの要求という間接的な原因がある。これによりJCOが弱体化した。電力会社は自由化によるコスト低減の圧力の下、国内企業からではなく、外国から燃料を購入するようになってきた。通産省、原子力委員会もそこまで目が届いていなかった。
電力会社は、需要が伸びないと会社として成立しないという問題を抱えているのではないか。電力会社のシステムのあり方を考えるべきではないか。