美学藝術学

21世紀に於ける美とは何か?

美学芸術学(2020年) 橋本典子

参考図書、今道友信『美について考えるために』

I)コロナ禍で考えてほしい問題点
A) コロナ禍ですべての生活が変わったといわれているが、美容芸術の分野で何が変わったのか?美容を芸術の一分野として考えるべきであろう。(理由)創造活動であるから。
B) 美学芸術学の分野で何が変わってきているのか?
1)美という価値にいかにしたら近づけるのか?「美」とは何か?
2)現実生活に対する近さが増した。我々の意識の中で色々なものが経済と直結するようになった。理論よりも実践が更に「実生活の中で」大事に考えられている。
3)数字の魔術が「科学」という名のもとに闊歩してきている。

ここで大切なことは、今こそ「理論」であり、「何を考えるか」である。
(理由)人々が深く考える余裕がなくなってきてすべてを短絡的に考えており、すぐに結果を出そうとしている。観察(observation)の大切さ(一歩引いて物事を見る)。

II) 20世紀と21世紀とを定義してみる
1)20世紀―「技術連関」の成立
「技術連関」技術と技術が道具的性格を保持しながら大規模な形で結びつき環境となった
この環境、技術連関は自然と並び20世紀の科学技術の進展の結果である。
技術的革新―イノベーション(innovation)
コンピューターが大きな力を発揮
過程(process)を最小に効果、結果(effect)を最大に
  つまり時間経過を少なくして効率性を追求、20世紀後半では経済効果を追求するようになった。
人間の本質は時間性である、時間経過を短くすることは、人間の意識を圧縮することになる。実は、芸術創造、芸術鑑賞は時間を必要とする。芸術活動は人間の時間性の回復である。人間の精神的疲れの回復、癒しのため芸術活動をする。
(今道)20世紀は戦死者が一番多い世紀、2つの大戦で、都市への無差別攻撃により戦死者が一番多い。その意味で大戦と殺戮の世紀、
2)21世紀―「平和」を目指した世紀
しかし、21世紀は9.11の世界同時多発テロで始まり、様々なところで局地的戦争が起こり、難民が多発した
そしてコロナ禍、現在コロナによる死者の数は世界で7216万人を超えた。
「死」の意味が変わってきている。最期の瞬間に立ち会えない。
他方、宇宙に人々の目が注がられ、衛星の活動に注目が注がれる。
JAXA, 「はやぶさ2」によって小惑星「りゅうぐう」の土がもたらされた。
他方、宇宙支配の欲望が公然と語られ、宇宙戦争を想定する動きがある。宇宙軍隊の発想。
(今道)世界美化の時代、すべての人が自分の生活を「美化」する。美の実践者

III)コロナ禍でわれわれは何を「美」とするのか?
21世紀、日本では「美」の基準は西洋的な考えに基づいていた。
理想的な「美」は、黄金分割、ギリシア的な「美」、ミロのヴィーナス、パルテノン神殿或いはルネサンス的「美」例えば、レオナルドの作品、モナ・リザ等、しかしこれらの西洋的「美」の概念はポストモダンを経て大いに変化している。
近代的美の考えは過去のものとなっている。
デザインの問題―ユニバーサルデザイン(障害のある人を含めてすべての人のためのデザイン)
現在我々は何を美しいと見るか
宇宙への関心として「星空」、生活に直結した「道端の小さな野草」、自分の手中に入る繊細な人工物、朝焼けや夕焼けの美しさ、富士山の美しさ等々。雄大な富士山、そして横山大観の富士山、北斎の「富嶽三十六景」、自然美に関心がいっている。

「美」には、
1) 自然美、2)芸術美、3)機能美、4)人格美、
20世紀は「機能美」直線的美しさが新しい美として追求された。技術及び建築の美
自然美は、自然自体を神の作品とみる見方で、秩序があって完全であり、その最高は「崇高(Sublime)」である、人間技を超えている。

IV)美とは超越的価値である
「美」表意文字の美は、「羊」と「大」の字の組み合わせ、意味は羊(犠牲の羊)が大きい、
「義」「我」が「羊」を担う、我が犠牲の羊を担って「典禮」に参加する。
意味は、我が代表して「天」に対して垂直的に、そして「共同体のメンバー」に対して水平的に関係を持つ、つまり責任を負う。
「善」「台」の上に犠牲の「羊」が載せられている、捧げものとして「典禮」の中心の台に置かれている。
プラトーン(Platon) 
「精神がもろもろの学問からこの美学(「美の学」)にまで到達して認識は完全になる」『饗宴』
最高のイデアは善美のイデアである。イデア―○○そのもの
神がかりの狂気(マニア)になって、現実の世界を超えて神の世界(ミューズの女神の世界)に入る。「美の解釈」参照
霊感説(Inspiration)in (中に) spiritus(霊) enthousiasmos―en (中に)、theos (神)
ミューズは、文芸の神、詩と音楽を司る女神
美学(Aesthetica)は、1750年、バウムガルテン(Baumgarten)によって命名された。感性学
当時、理性(raison)が優位であったのに対して、感覚を大事にする学問、劣等認識論がある
理性は、明晰判明(デカルト)を求めた。

美学芸術学は「感覚」を大事にする学問である、「美」が入ってくるのは感覚を通してである。五感、更に複数の感覚の組み合わせ、それ以上にすべての感覚を使う。
例)ピカソの絵画―人間の顔、2つの目、眉も2つ、鼻も口も2つ、ルーマニアのユダヤ人、ゲオルギウの「自己分裂した実存」(『二十五時』)自分は、もう2度と戻れない故郷、ルーマニアの景色、そこにいる自らの姿と自分がこれから向かう収容所の方向を見ている、それは新しい意味付けである。意味の発見である。(p.104-106)
感覚でとらえればそれでいいのか? 否、感覚でとらえたものを理性によって知的に認識する。理性は、作品を場として或いは作品を介して自己と他者との関係性において、対話的に把捉して共通認識に至る。これが普遍的価値への道である。この活動は創造と観照の両方の方法によって実現する。

今道の解釈論によれば、1)記述(description) 2)分析(analysis) 3)判断(judgement) 4) 解釈(interpretation) の4つの過程があり、最終的には唯一の真なる解釈に達する。
「解釈は共時的かつ通時的な全体として、自己に極まる人間精神が作品を足場として理念に向かって築き上げていく知的登高の記録であるとともに、理念が作品を介して人間精神において展開する自己開示である」(p.78)
つまり人間精神の理念への知的登高であり、かつ理念の人間精神における自己開示である。

V)芸術作品の層構造
フランスの美学者エティエンヌ・スーリオEtienne Souriau(1892-1979)
『諸芸術の照応』(La correspondance des arts, 1947)
1) 物理的存在
2) 現象的存在―感覚的な質qualia
3) res的存在―フィクション(fiction-作話)の有無、再現的―非再現的
4) 超越的存在―halo(後光)の有無
傑作か否かの場合、神秘的後光の有無により決まる。
芸術作品はペルソナである―人格的であり、対話の相手になってくれる。

神の創造(creation)―無からの創造creatio ex nihilo
芸術家の創建(instauration)―既に存在する所与の存在を使って個的存在に上昇的に至らしめること。(より完成されたもの、完全性へ)
芸術作品は建築的構造を持つ一つのコスモス(宇宙)である。
神の創造は芸術家を通して現在も続いている。
美的道徳―美という価値は倫理と結びつく
善美のイデアを求める
例)シラー(Schiller) 「美しき魂」芸術創造の経験を通して人格が善美のイデアに近づく(美的教育―芸術活動を介して魂を善く、美しくする
パスロン(フランスの美学者、画家)実践者―co-creation (共創造)複数の人々による新しい創造― 例)映画、演劇、アニメ等々。

VI) カロノロジア(Calonologia)
美の学としてのCalonologia-美の形而上学
1) Calon-to kalon (美)
2) on―存在
3) no―nous(理性)
4) logia―logos(言葉、理論、学)

人間は自然の一部分である。自然破壊は自己破壊に繋がる。
都市論―自然と技術連関との調和
自然を破壊し続ける人間―CO2の削減、温暖化、人工物の在り方
否定工学、人工物を元の素材に還元する
自然を自らの教師とする―熟する時を待つ存在―人間(自然の生成を模倣)
存在の彼方に美という価値が輝く―プラトーンの『国家』存在の彼方に善美のイデアが輝く
 
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